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コラム 『ビジネス未来』
バックナンバー ⑫ 2023/7/4~2023/9/26

タイトル

#151 2023/9/26  リチウムイオン電池 内部抵抗
#150 2023/9/19   “より有意義な会議に向けてのコツ”こぼれ話 シリーズ⑥
#149 2023/9/12   定年クライシスを考える
#148 2023/9/5  世界のEV急速充電規格が統一される!?

#147 2023/8/29  クルマが空を飛ぶ世界 ~ その3 ~
#146 2023/8/22  コンセンサスの力
#145 2023/8/15  変化した働き方と求人・求職
#144 2023/8/8  スポーツの“言語化”
#143 2023/8/1  仕事の遅れは1日ずつの積み重ね

#142 2023/7/25  リチウムイオン電池 基本特性「SOC」
#141 2023/7/18  
 “より有意義な会議に向けてのコツ”こぼれ話 シリーズ⑤

#140 2023/7/11  親と同居/別居という選択について
#139 2023/7/4  世界のBEV/PHEVの普及状況について(2)

#151  2023/9/26
リチウムイオン電池 内部抵抗


 今回も前回のSOCに続き、リチウムイオン電池の基本的特性について解説したいと思います。今回は内部抵抗です。

 電池には、起電力と内部抵抗があるということは、教科書にも書いてあるとおりで、リチウムイオン電池の等価回路は、下記図1の様に示すのが一般的です。
ちなみにカッコ内の抵抗・コンデンサーのペアが多いほど、より現実に近いようですが、演算や説明が大変になりますので、これくらいで説明します。

図1 (作成:筆者)

 図1から分かるとおり、測定可能な電池端子電圧は、R0(直流抵抗)での電圧降下、および一次遅れ成分を持つ、R1/R2(反応抵抗/拡散抵抗)での電圧降下、そしてOCVの総和になります。言い換えれば、これら内部抵抗が分かれば、測定可能な電池端子電圧から、各々の電圧降下分を差し引くと、OCVになり、SOC-OCV特性から電池で重要なパラメータであるSOCを特定できます。
 また、充放電電流が大きくなると、内部抵抗での電圧降下が大きくなり、セルの最大/最小許容電圧を超えてしまいますので、超えないように出力できる充放電電流を制限する必要があります。これは、SOPState of power)の基本的考え方になり、内部抵抗が大きくなると出力が出せなくなります。内部抵抗は低温域で大きくなるので、よく言われる「低温時は出力出せない、回生できない」はこれにも由縁しています。

 以上の様に、内部抵抗は重要なパラメータでありますので、その特性を簡単に紹介したいと思います。物理的意味ではなく、使用する上で必要な電気的特性を中心に解説します。

 分かりやすく説明できるのが、充放電電流のステップ変化時のセル電圧の挙動です。
図2に模擬した、ステップ応答図(充電電流I⇒0のときのセル端子電圧)を示します。

図2 (作成:筆者)

 先にも述べたとおり、電池端子電圧は、OCV+過電圧(内部抵抗での電圧降下:R0、一次遅れ特性のR1/R2)となります。
充電電流を0Aにステップ変化させると、直流抵抗R0での電圧降下(=R0×I:電流)がなくなります、その後、一次遅れ相似のR1/R2での電圧降下が徐々になくなり、最後はOCV電圧になります。
DCRの5秒値とかいいますが、これはステップ応答5秒後の電圧降下から求めます。
(5秒後の電圧降下/電流変化)
つまり、5秒間充放電したときの、電圧降下を求めるのに使用します。
また、OCV電圧を求めるためには、電流を0Aにした後、十分な休止時間が必要なこともよく分かります。

こんな内部抵抗ですが、これらは、SOC、温度、劣化度により大きく変化します。

定電流充電時の、SOCによる内部抵抗の大きさのイメージを図3に示します。(ここには、直流抵抗と一次遅れ抵抗成分含む。)
SOC域で内部抵抗が増加しますので、1次遅れの時定数も過電圧も増加するので、SOC等を求めるのには低SOC域はあまり適しません。

図3 (作成:筆者)   〔 横軸はSOC(%) 〕

 図3のSOC60%領域の、温度による内部抵抗の変化のイメージを図4に示します。(ここには、直流抵抗と一次遅れ抵抗成分含む。)

図4 (作成:筆者)   〔 横軸は温度(℃) 〕

 低温域での内部抵抗の上昇率が大きいことがわかります。
また、劣化でも抵抗値は上昇し、SOH-R と言ったりします。更には、充電/放電でも違いあります。

 こんな複雑な内部抵抗ですが、これを正確に推定することで、電池の能力をフルに引き出すことが可能になります。様々な推定方法がありますが、これは専門書にお任せします。

では、また次回。

(山田)

#150  2023/9/19
“より有意義な会議に向けてのコツ”こぼれ話
~ シリーズ⑥ 見える化スッキリのコツ編 ~
身近なチョットした改善で快傑会議&好業績の一翼も!


ビジネスに携わる皆さまにとっての日頃のコミュニケーション手段の1つとして、「会議」はとても重要な役割が有りますが、上手くいっていますか。何かお困りの点はございませんでしょうか。

会議のことでよくお聞きするのは、

  • せっかく意見を出せたのに、ホワイトボードに書きっぱなし。
  • もっと短時間にコンパクトに分り易く、議論の結果を見える化できたら。
  • 職場に持ち帰っての皆へ展開や上司への報告も よりスムーズなのに!

といった意見等です。

そこで皆さんが懐刀として活用できるコツが、いくつか有るのです。
ここでは、「フレームワーク」とよく呼ばれている手法の一端をこぼれ話として紹介します。

◆想定型

・2軸系
 <評価軸の例1:縦軸に重要度/横軸にスピ-ド、例2:縦軸に商品価値/横軸にかかるコスト>

これ等もどのフレームを使うか、その軸を何にするか、ある程度の予めの想像力は必要ですが、記事進行役の 経験での範囲で よいので いくつかの書く軸を分けて用意しておいて、順次その中に 出た意見を書き込むようにして行くのです。

そのいくつか用意したフレームを用意しておいて(通常1つずつ順番に2つ程度 )、その中に埋めていくのです。

それではみ出すものが 多く出てきた場合は、多く出た者同士で ふさわしい フレームや軸を その場でみんなで考えて 作成し、そこに新たに埋めていくのです。 

暫くして 全体が 埋まってきたら、みんなで そのフレームを 俯瞰してみます。

それで 適切なフレームかどうかを 見極めて行きます。
みんなで議論して より適切な フレームが もし新たに発想できましたら、そちらのフレームに フレキシブルに 移行することを 躊躇ってはいけません

そうやってできた全体の いくつかの フレームを見極めたら、ある程度 満足が行けば それで OKです。

ベタな箇条書きよりも はるかに わかりやすく いくつかの グループに 別れた フレーム群として全体が仕上がって いることでしょう。

◆非想定型

議論が白熱してきますと、 又は異分野の議論等では、想定外の突飛なものが意外と出てきますよね。商品力、売れ筋、ワンストップ対応満足度、等々。
これも実は 議論の中身としては 大歓迎なんです。
意外と こういった意見の中にこそ 玉石混合ではあるものの 玉石混合の中にこそ、優れたアイディアが ダイヤモンドのごとく 混じっている場合が ありうるのです。
記事進行役としては それを ぜひ見逃さずに マーキング等して軸やフレームへの活用の キーワードとして運用して行くのが 一つのコツです。

玉石混合の中から、皆で想像力を働かせ、玉を発見されて職場で活用の目安、きっかけの一助になるものが見つかりましたら何よりです。

【今後に向けて】

いかがでしたでしょうか?
いくつかのこぼれ話の中で、1つでも皆さまがもし拾えて再活用できるものが見つかり、チョットしたコツとして、今回はフレームワークを活用することで、きっと、職場に持ち帰っての皆へ展開や上司への報告もよりスムーズになると信じて、皆さまの少しでもお役に立てましたら幸いです!

(井上)

#149  2023/9/12
定年クライシスを考える
~ 
最後までイキイキと生きたい ~


◆ある新聞で”定年クライシス(危機)”というテーマの特集がありました。

 その内容をかいつまんで説明すると、「特に男性は定年を迎えると家の中にも地域社会にも居場所をなくす人が多い。これを防ぐためには男性の自覚と変革が必要」というものです。その中で紹介されていた”定年オヤジ改造計画(垣谷美雨著)”という本を読んで、私はとてもショックを受けました。ここで描かれている定年オヤジは…

  • 自分では、家族から尊敬され慕われていると思っていた。
  • 実際には妻には避けられ、娘にあきれられ、息子の嫁とはかみ合わず。
  • 妻が相手をしてくれないと、自分と行動を共にしてくれる人は誰もいない。
  • 色々な出来事を経て、全て自分が悪かった(女性陣の言うことは正しい)と反省する。
  • 考え方を改めて息子の嫁や孫たちのために奮闘することで、ようやく女性陣から家族として受け入れてもらえた。

妻や娘の言い分は100%正しく、オヤジは100%反省しなければならないという全体のスタンスは極端すぎると思いますが、確かに自分も含めて多くの男性は女性に比べて明らかに社交性が低い(仕事を離れると新たに友達を作るのが苦手)のではないでしょうか。会社という組織の中で生きてきた人は、そのよりどころを失うと苦労することは容易に想像がつきます。

◆幸い今の私の生活は定年クライシスの定義には当てはまらないようです。

自慢話のようで気が引けますが、今の私は定年クライシスの定義には当てはまらないようなので、その理由を分析してみました。

  • 中学生時代から続けてきたスポーツのおかげで、今も週4日、自分の子供世代(保護者)や孫世代(小学生)、さらには中学生以上の若いOB/OGとコミュニケーションを取る機会があります。
  • 40歳の時から、以前からやりたかった趣味(合唱)の世界に飛び込んだことで、今はその活動(組織)の中で企業人として培った知識やスキルを活かせる役割(事務局長)を担っています。
  • 50歳を前に、それまでのキャリアを捨てて新しい分野の仕事(心理職)に挑戦したことが、今もその分野の様々な場所で現役として活動を続けることにつながりました。
  • 闘病中や高齢の家族の心をいやしてあげたいと60歳になってから始めた新たな趣味(ウクレレの弾き語り)が、今では自分の一番の楽しみになっています。
  • コロナ禍を機に、自主的に家事を分担したり、オンラインでの様々な勉強会に参加する機会が増えるなど、生活パターンの大きな変化がありました。

◆なぜそういう状態に身を置けたかを振り返ってみると…。

  • どれも自分の定年後対策のために始めたことではない。その時に自発的に「やりたい」と思って始めたことなので、「何をすれば良いか?」と悩んだことはありません。
  • 始めた年齢は様々でも、それが途切れることなく続いている。中には途中で「止めたい」と思ったものもありますが、“継続は力なり”で、続けてきたことで学べたことや嬉しいことはたくさんあります。
  • 他者とのコミュニケーションの機会になっている。一人で楽しめる趣味もあると思いますが、他者と接することで(良くも悪くも)刺激を受け続けることが出来ます。

◆健康寿命の終わりを迎えた時にクライシスとならないようにするために

  • 厚生労働省の定義によると、健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。世の中には「健康寿命の終わり=寝た切りの生活や介護が必要な生活」と思っている人も多いかもしれませんが、例えば腰痛がひどくて立ち仕事がつらい人や、肩こりがひどくて高いところに外出できなくても大丈夫。
     ⇒例;パソコンやスマホを活用して、オンラインでの交流を積極的に行う。
  • 目に見える(物質的な)形で人の役に立たなくても大丈夫。
     ⇒例;一人でやっていても楽しいと思える趣味や、他人を幸せな気持ちにしてあげられるような趣味を持つ。
  • 障害や病気を抱えていても大丈夫。

 手が届かない人も「日常生活に制限がある人」に当たります。つまり、健康寿命が終っても、自立した日常生活を送っている人はたくさんいるのです。
 統計上は、日本人の平均寿命と健康寿命の差は男女とも10年程度ありますが、健康寿命の終わりを迎えても(日常生活に制限があっても)自立した日常生活を送れている(介護保険のお世話にはなっていない)間は、まだまだイキイキと生活したいものです。そのためには今の内から例えば以下のようなことを積極的に行うことが大事になってくるのではないでしょうか。
 
ちなみに、自立した日常生活を送れなくなってから亡くなるまでの期間の平均は、男性;1.6年、女性;3.2年だそうです。
 
最後の13年間くらいは、何もしなくても心穏やかに過ごせるようになるくらい、達観した人生を送りたいものです。

参考資料;

  • 定年退職前後の生活の変化(第一生命経済研究所20182月)
  • 平成 24 年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)による「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究班」
  • 令和4年版高齢社会白書(内閣府)

(田村)

#148  2023/9/5
世界のEV急速充電規格が統一される!?
~ Ford, GM, ベンツ, 日産が2025年から北米でテスラの急速充電規格の採用を決定 ~


 以前、2022/3/8のコラム#71で、日本発のEVの充電規格であるCHAdeMOが、北米・欧州で次第に採用されなくなり、日本のみの充電規格になりつつあることを寄稿した。1年半後の現在、日本発のEVの充電規格であるCHAdeMOのガラパゴス化を懸念する以下のようなタイトルのニュースがインターネット上に溢れており、実際にその傾向に拍車をかけるニュースも含めて、以下にまとめてみました。(各サイト*1は文末を参照)

 1) 論考/1月21日】EV界で消えゆく「チャデモ」イノベーションで出遅れる日本
 2) 
日産、米でテスラの充電規格採用 EV25年から搭載
 3) 
日産、米国向けEVでテスラの充電規格採用
 4) 海外で広まるテスラの充電規格 日本のEVユーザーはこの先どうなる
 5) 
電気自動車の充電はテスラ規格が席捲? 今後の急速充電はどうなる?
 6) 
EVの急速充電規格争いはテスラの勝利ですか?」。日本の充電規格「チャデモ」の協議会会長に直撃
 7) 
日産もベンツもこぞって採用! テスラの急速充電規格はなんでそんなにモテるのか?

最初に、現在の世界の充電規格はどうなっているのでしょうか?

 前回のコラム#71では【5 規格+1(ChaoJi)】でしたが、現在は下記表1のごとく、【4規格+1】で、1規格減っている。これは、北米のCCS1規格がNACS*2規格に統一されたためである。

*2;米自動車技術者協会(SAE)が、2023年6月NACS(North American Charging Standard)規格として、テスラ式の急速充電規格をCCS1から米国の標準規格に採用すると発表

<表1>

NACSの最大充電電力はコネクタの規格書(最大1000V900A)から算出。規格上の最大は謳っていない
引用)  5)電気自動車の充電はテスラ規格が席捲? 今後の急速充電はどうなる? より

今後、世界はEVの急速充電規格の統一に向かうのか?

 ① まず、CHAdeMO規格の行方ですが、残念ながら先のコラム#71で懸念した「欧米市場から消えていく」ことが、下記表2の規格別シェアとCHAdeMO離れに拍車をかける以下のニュースがリリースされ、現実味を帯びてきている。

 ・<2>  2021.9時点の欧米におけるEV急速充電器の規格別シェア(%)

20211月 北米の充電設備ネットワークの大手Electrifyがチャデモの新規設置はしないと発表
20214月 フランスにて充電ステーションでのチャデモの設置義務が削除
  引用) 1)論考/1月21日】EV界で消えゆく「チャデモ」イノベーションで出遅れる日本、より

2023.7.20 日産 北米向け日産車に2024年からCSC1∔アダプタで、2025年からNACS用充電ポートを搭載し、NACS規格に対応を発表
  
引用) 3) 日産、米国向けEVでテスラの充電規格採用、より

② 世界の急速充電の標準規格になる可能性が一番高いのは、私見ですが、NACS規格だと思います。理由は、テスラが売れて市場でデファクトスタンダードになっているだけでなく、EVユーザーの要望を最も満足させている充電規格と思っているからです。 

CHAdeMO規格の衰退の原因はNACS規格の拡大採用理由

今回の調査で、CHAdeMOが世界標準の充電規格から日本市場のみとなってしまう原因と、デファクトスタンダードになりつつあるテスラ規格のNACS規格が拡大採用される理由として、以下の3つの原因/理由が挙げられており、更にCHAdeMOの唯一のメリットのV2Hさえも表1にあるようにNACS規格は対応予定となると、本当にCHAdeMOである理由がなくなり、本当にガラパゴス化或いはバハマ化(規制と既得権益に縛られてレトロなアメ車の博物館になっている状況)の好例の一つになることが心配である。

(1) NACS; 最大電力が大きいこと ⇐一番のメリット
  CHAdeMO; 最大電力が小さいこと⇐一番のデメリット
(2) NACS; Plug in Charge 対応していること⇐二番のメリット
  
CHAdeMO; Plug in Charge対応していないこと⇐二番のデメリット
(3)NACS;急速充電と普通充電がひとつのコネクタで兼用していること
  
CHAdeMO; 急速充電と普通充電がふたつのコネクタに分離していること
(追加)NACS; V2H対応していないが、対応予定とのこと⇐欧米でのニーズは殆どない
  
CHAdeMO; V2H対応していること⇐唯一のメリット(日本では)
引用) 5)電気自動車の充電はテスラ規格が席捲? 今後の急速充電はどうなる? より 

増えるNACS規格と消えゆく?CHAdeMO規格について思うこと

 今回のEVの充電規格に関する記事の中で、特に印象の強かった記事は、株式会社エネルギーフォーラムの【1) 論考/1月21日】EV界で消えゆく「チャデモ」イノベーションで出遅れる日本】の中でのテスラ社の取り組みについて書かれている以下の抜粋である。特に、赤字の部位である。

“テスラ社のイーロン・マスク氏は、急速充電器が不足しているなら自ら設置しようとスーパーチャージャーのネットワークを自ら作り始めた。マスク氏には「鶏が先か卵が先か」など自動車産業の領域的な発想はない、必要なら作る。 パワートレインの転換期に必要なものは、結局、自ら進める覚悟があるかどうかだ。”

 つまり、「鶏が先か卵が先か」、EV車の大容量化が先か、充電器の大容量化が先か、と議論している間に、EVの走行距離の長距離化、バッテリー搭載量増加に対する高出力化に遅れたことが、CHAdeMOの廃れた主な理由であることに強く共感した。

日本の急速充電規格は、どうあるべきか?

 いずれにしても、現在のCHAdeMO3.0の高出力化は不十分なので、大規模な高出力化が必要である。選択肢は、実績のあるNACS+V2Hか企画のみで実績のまだないChaoJiのいずれかであるが、NACS+V2Hしか考えられないが、いかがだろうか?

<参考資料>
*1;各タイトルのニュースサイト
1) 株式会社エネルギーフォーラム 2022.01.21
2) KYODO 2023.07.20
3) Impress Watch 2023.07.20
4) webCG(Car Graphic) 2023.7.24
5) Impress Watch 2023.08.24
6) 東洋経済ONLINE 2023.8.25
7) ベストカー BestCarWeb 2023.08.26

(片岡)

#147  2023/8/29
クルマが空を飛ぶ世界 ~ その3 ~


2021/1/12「クルマが空を飛ぶ世界」2021/10/26「クルマが空を飛ぶ世界 ~ その2 ~」で「空飛ぶクルマ」について触れてみましたが、先日、日経産業新聞(2023/8/4)に「中国国産ジェット機『ARJ21』がインドネシア発着の国際線で初の商業飛行を行った。」との国産と名の付く航空機に関する話題を目にし、久しぶりに「空飛ぶクルマ」の最新状況を探ってみました。

まずは、日経新聞の最近の記事です。以下のように伝えています。

===============
 静岡県はヘリ運航の朝日航洋と連携し、電動垂直離着陸機(空飛ぶクルマ)が離着陸できる場所や航路の調査に乗り出す。県が持つ3次元の地形データを活用し、機体が安全に離着陸できるルートを検証する。空飛ぶクルマは将来的な成長市場と期待されており、関連企業を誘致する基盤づくりを進める。 (中略) 空飛ぶクルマは政府が2025年の大阪・関西万博での事業化を目指し、23年度中の関連制度整備を目指している。空飛ぶクルマを開発するスカイドライブ(東京・新宿)など5社は22日、空飛ぶクルマの実装に向けて、大阪ベイエリアでドローンを用いた実証実験を始めた。
2021/10/23  日本経済新聞「空飛ぶクルマ」万博に向け実験、スカイドライブなど5社。)
===============

この記事によると、実証実験という技術面での検証に加え、官民をあげて、運用に必要な法整備、航路調査、企業誘致など周辺環境を含めた、いろいろな整備が進んでいるようです。

一方、具体的な機体や飛行の方は、今どうなっているのでしょうか。

1)飛行について

ヘリコプター運航を手掛けるAirX(エアーエックス、東京・千代田)などは、「空飛ぶクルマ」の海をまたぐ2地点間の移動(離島間)の試験飛行に、成功。(アジア初)
2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)での本格実用を見据えて飛行実験を継続。
尚、機体は、中国のイーハンが開発した機体。
2023/6/30  日経産業新聞 より)

2)日本の機体について

 (1)モノ造り

「空飛ぶクルマ」を開発するスタートアップのスカイドライブ(※)は19日、スズキと製造に向けて基本合意したと発表。スズキグループの工場を活用し、2024年春の製造ラインの稼働開始を目指す。 同機体は25年の国際博覧会(大阪・関西万博)での運航を目指す。26年には国内での型式証明を取得予定。

 (2)事業

同じく、スカイドライブは、2026年以降の「空飛ぶクルマ」就航を目指す米国で5機、購入予約を受ける。これは、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)で実用化を目指す3人乗りの機体。(2023/7/21  日本経済新聞より)

他にも国内外で、「空飛ぶクルマ」に関する情報が飛び交っていますが、その中からわずかな記事だけを取り上げてみました。これらの記事からだけでも、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)での実用化へ向けて、日本も着実に、前に前に進んでいるように見えています。

しかし、以前のコラムで、「日本の空飛ぶクルマは、現在の自動車のように日本企業が主となりうるのか、あるいは航空機のように海外企業が主になってしまうのか。」という疑問を投げかけたことがあります。
つい最近も、日本の開発で、うまく行かなかった事例があります。
3年近く前のコラム「#008 2020/11/16 「 技術、伝承の難しさ 」~開発の力が落ちていないか(2020/11/4日本経済新聞朝刊)を読んで~」で、YS11以来、半世紀ぶりの国産旅客機、かつ国産初のジェット旅客機である「三菱スペースジェット(MSJ)」の事業化が事実上凍結された記事に触れました。その後、三菱重工業は202327日に、正式に事業撤退を発表しました。その原因究明は、官民で行われていますが、三菱重工元社長は、その原因として、

・過去の開発経験が継承されていなかった。
・安全基準などを満たしていることを証明する「型式証明」の取得に関し、携わった経験のある人材が不足していた。
・外部(外国の技術者)から“学ぶ姿勢”が欠如していた。
・人材育成を疎かにしていた。

と言われています。
発言された上記の要因は、国産ジェット機に限らず、多くの失敗事象で共通に言われていることが、含まれています。

日本の「空飛ぶクルマ」は新たな挑戦ではありますが、同じ轍を踏むことなく、国内外の多様な人材を結集して、知見を集め、そして新たに付加、成長させることで、日本の新たな事業として、無事飛び立って行くことを期待しています。

※:会社名:株式会社SkyDrive 
 
設立:20187
 
事業内容:空飛ぶクルマ(電動垂直離着陸型無操縦者航空機(eVTOL))の開発・製造・販売・
     運航サービス等、
物流ドローンの開発・製造・販売・運用サービス・コンサルティング等
 
所在地:豊田本社・・・愛知県豊田市挙母町2-1-1 他

(林)

#146  2023/8/22
コンセンサスの力
~ 
3の意思決定 多数決でも満場一致でもない ~

<前回コラム#137のおさらい>
==========
組織の中には当たり前ですがいろいろな考えの方がいます。
考えが違うことを放置しておいては組織力を発揮して成果を出すことはできません。
考えを一致させてゴールに向かう推進力が必要になります。
この場合、相手とのコンセンサスが推進力になります。
多数決でもない、満場一致でもない、コンセンサスです。
ではこのコンセンサスはどのように成立させれば良いのでしょうか。
==========

まず、コンセンサスとはなんでしょうか。

なんとなく言葉から受けるイメージは皆の意見が一致している状態ということでしょうか。
いろいろな考え方のある中で本当のところ全員一致にはなりません。

では、妥協なのでしょうか。
妥協では多分組織力を最大化することはできないように思います。

コンセンサスとは:

  • みんなは私の意見を理解した
  • 私はみんなの意見を理解した
  • 決定したことは私の当初の意見と100%一致しないかもしれないが、私はこれを100%支持する

という状態だと考えます。

では、このような状態をどのように生み出すかという話題です。

コンセンサスの3ステップ

ステップ1)意見の見える化
ステップ2)意思決定
ステップ3)リスクへの対応

このように書いてみると、そうなんです。当たり前のことを面倒くさがらずに淡々とやりましょう、というのに近いと思います。

少しポイントを詳しく書いておきます。

ステップ1)意見の見える化

大切なのは、“皆さんの意見を聞いた”いうだけではダメだということです。かといって、“理解した”というのを確認する方法もありません。従って、出来ることは皆の意見を見えるようにする、“見える化”です。簡単なのは、皆さんが見えるように書くことです。可能な限り忠実に意見を書いてもらい、それを説明してもらうことです。決して否定するのではなく、理解に努めましょう。

ステップ2)意思決定

皆さんの意見が出て理解した段階で、案を複数提示して、評価して、決定します。D A表のイメージを思い浮かべてください。可能な限り皆さんの意見を取り入れて評価して決めます。

ステップ3)リスクへの対応

決定した案は、きっと皆さんからみると更に意見があると思います。それもステップ1で出ていた意見が再燃するでしょう。従って、決定した案のリスクを洗い出して評価して対応を皆で決めます。ここで皆さんのステップ1で出てきた意見やステップ2での意見も吸収できると思います。

このステップを通じて、コンセンサスの条件を整えます。

しかしながら、人間はそんなに単純ではなくて、

  • どうしてもその案だけは受け入れたくない
  • 時間がなくてステップを踏む時間がなくてコンセンサスが得られない
  • 口では分かったと言っているが、顔がN Oと言っている

いろいろあると思います。

それではこのような状況はどのように乗り越えてゆけばいいのでしょうか。
次回は、この困った状況への対応方法を一緒に考えてみたいと思います。

(東出)

#145  2023/8/15
変化した働き方と求人・求職
~ コロナ禍後の転職活動 ~

最近、私の周りで“転職”を強く意識される方が増えています。それは、好むと好まざるではなく、或る意味で「必然」、必要に迫られる形で動き始めることになった方が目立ちます。かたや、このコロナ禍で社会の様相が大きく変化し、特に高齢者が続けてこられた歴史のある中小・零細企業や個人事業が数多く廃業・消滅しています。個人商店の閉店の多さで皆さんも実感していることと思います。

私自身、社会人になってから今回起業するまで、会社の看板の数で言えば10社で勤務(即ち、ビジネス未来&Co.は11番目)してきました。その中で、業界を超えた異業種転職を経験したこともあり、転職のご相談を頂いてアドバイスさせて頂く機会も少なからずありました。夏休み期間は、年間を通しても中途採用の求人案件が数多く出る時期なので、今回はコロナ禍後の「転職」について、“人財コンサルではないが転職経験が豊富な人”として、求人(企業側)・求職(応募者側)の双方の視点で少し語ってみます。

■就労環境の変化-3つのポイント

このコロナ禍によって、「働き方」に大きな変化を与えたのは『リモート化』でした。企業によっては5月の第5類移行に合わせて「全員出社」へ戻したところもありますが、やはり従業員の評判(ES)は良くないです。この3年でITツールの進化が目覚ましく、以前のような労働スタイルに戻る必要は最早ないでしょう。これは、求人面に進化を促しています。

そして、コロナ禍を経験して『人材の流動性』は更に高まりました。ここを意識できていない会社が多いです。大企業で耳にすることが今も多いのですが、いわゆる「使えない従業員を養っている」状態に改善の手を入れないと、真逆の「優秀な人間から辞めていく」ことが必然的に発生します。こうなると業務の混乱や悪循環に拍車がかかります。特に、「バブル期の“勘違い従業員”に手を付けられない企業」は業績が一向に上がらない。昨今の経済を見ていても、デフレ時代の縮小均衡のスパイラルから抜け出せず、株価の上昇トレンドに追随できない“出遅れ”企業が案外多いのですが、そういう企業にこの手のお話(ウワサ)を耳にする機会がありますね。株価は見かけ上昇していますが、足許が怪しいので市場に評価されてしまっています。これはリスクです。

3つめの特徴は『労働人口の若返り』です。単に平均年齢が下がったという意味ではありません。コロナによる事業環境悪化を受けて年金世代の「離職」や「卒業(事業を畳む)」が多く発生し、高齢者労働人口が減ってきたことによる“良くない若返り”が起きていると受け止めています。これは国や関係機関からのデータの裏付けを待ちたいところですが、少子化の中で労働環境を加速度的に変化させる要因に繋がると言えるでしょう。もちろん、年金制度への影響も一層顕在化してくると考えています。

■求人側・求職者側の動きを評価する

第5類となりコロナ禍から経済が活発に動き出す中、「求人への応募が少ない」と悩む企業の声があります。デフレ下ではなく、構造インフレへの転換が進む中で、求人側(企業側)で人が集まらない状況が起きるのは、まずは『給料を適正に払っていないと判断されている』と言い換えてよいと思います。これは、単に採用活動だけでなく、現職の従業員の離職理由にも繋がるので、企業としては時流に乗る/先んじる対応が出来るかどうかです。

また、「求人企業のロケーションで選別される」という現象が、新社会人世代で顕著になってきています。地方都市の更に郊外に本社を持つグローバル大手企業に採用に関して伺ったところ、「リモート化の流れの中で、ロケーションが障害になって都会の会社と比較されてしまって…」とのことでした。“収入を考えれば、この企業の内定を断るなんてありえない!”というのが私の感覚でしたが、いまの求職者(特に新卒)はワークライフバランス重視で「ロケーション/生活環境が変わらない」が「高い給与・年収」より優先する事実には驚きました。

かたや、求職者側ですが、先ほども述べたように、コロナで一層高まったのは「人材の流動性」です。この環境下では「自分を高く売る」ことが一層重要になります。かと言って、「とにかく人不足」=超売り手市場ということだけで採用される時代でもありません。即ち、しっかりと実力をつけることが大切です。いわんや、“ニセモノ”はすぐに見抜かれます。

■これからは、何が重要か

やはり「副業」という選択肢の重要性はますます上がると思います。但し、本業・副業をどこまで各々「公平」に扱えるか?が、求人側・求職側の双方に要求されてきます。ここが面談ポイントでもあり、採用ポイントです。どちらも「仕事」として「プロフェッショナルな対応」が出来るかが大変重要です。そこをしっかり見極めておかないと、「一般社員としての給与」か、「プロフェッショナルとしての報酬」かという、その人の「評価」にもなる訳です。これは、全て「時給」という形で現れます。だから、求職者は自分磨きを継続的に行なっていくことも重要です。「サラリーマンも全て時給で評価される」というのは私の経験談ではありますが、もし参考になったら、このことを気に留めておいてくださいね。

お盆の頃は求人がたくさん出る時期です。(GW、夏休み、冬休み、が求人のハイシーズン)
転職活動は、社内にいてはわからない自分の実力や価値を第三者に測ってもらう機会になります。より前向きな人生を送る為の方策として、また、自分磨きのきっかけや強化すべき分野を与えてくれる環境でもあります。是非活用して頂きたいと思います。

(鯨井)

#144  2023/8/8
スポーツの“言語化”


スポーツの世界で“言語化”というワードがよく使われるようになっています。

“言語化”の意味を調べると「言葉で表現すること。 直感的なものを説明・伝達可能にすること」「感覚を理論的に整理し、相手にわかるよう言語としてアプトプットする過程」と出てきます。(Weibo辞書より)

基本的に、ほとんどのスポーツは、瞬間的な動きの連続であり、“言語化”は、困難であり、かけ離れているイメージがあります。そして、プレーする選手達にとっては、“言語化”は重要なことではなく、フィーリング、仕草、表情、経験等で味方とのチームプレーを行ない、相手との駆け引きをして、勝利に結びつけることを重視している傾向が強いと思います。

それでは、何故、最近、スポーツの中で“言語化”という言葉がよく出てくるようになったのでしょうか?

スポーツ指導者は、プレーを“指導”する上では、指導する相手に、基本プレー、技術の上達・改善について、何か“言語化”して伝える必要が出てきます。また、チームスポーツの場合、選手同志で、勝つ戦略・方法の共通認識を持ち、共有化することが必要です。そのためには、同じ練習を繰り返し、感覚を合わせ込むことが必要ですが、“言語化”を行うことで、より共通認識を深めること、同じ間違い・誤解を最小化することで、より効率的な上達・強化を図ることができるかもしれない、という考えに気づいたからだと思います。
また、日本のスポーツにおいて、“言語化”されている専門用語が、他国と比べても劣っている部分があり、“言語化”を進めることで、それぞれのスポーツを発展させようと考えるようになったからだと思います。

■他国と比較し、日本スポーツの“言語化”が劣っている例

1)中国の卓球用語

中国は世界でも圧倒的な卓球大国です。最近は、中国との実力差を埋めつつある日本ですが、それでも、中国の選手層の厚さ、指導環境の充実度は叶わないようです。他国より圧倒的に多い中国の卓球用語を覚えることで、細かく、効率的に技術習得を図ることが、より早く卓球技術が向上できる上達を実現できると考える選手もいるようです。

ロンドン、リオオリンピック代表だった福原愛さんは、選手当時、雑誌(*1)のインタビューで、次のように答えています。

 「中国語は、卓球についての言葉が豊富なんです。たとえば、スマッシュについていえば、日本では『強い』、『弱い』それに『普通』の3種類くらいしかないと思いますが、中国では私の感覚として、30から10段階刻みで、120くらいまで表現する言葉がある感じなんです。」

極端な言い方をすると、日本人選手がスマッシュを行う場合、3種類のしかないのに対して、中国人選手は、120種類のスマッシュを持っていることになり、それだけで、卓球技術の差が生まれます。“言語化”の差がそのまま実力差となる典型例とも言えるかもしれません。

2)スペインのサッカー用語

サッカーでは、強豪国スペインには、日本語に訳せない、または、日本語に存在しないサッカー用語が多く存在します。

例えば、「ペルムータ」。この単語の日本語直訳は存在しません。サッカーの個人戦術の専門用語で、日本語で言うと「カバーリングのカバーリング」となります。これは、サイドバック(SB)が抜かれたときに、センターバック(CB)がカバーリングに行き、その抜かれたサイドバックは、センターバックのポジションを埋めることを意味します。

【ペルムータ(カバーリングのカバーリング)*2

かつて、日本人選手が欧州リーグ(英、独、伊、西の4大リーグ)へ移籍した際、「戦術理解が低い」とよく言われていました。元々、サッカー戦術で先端を進んでいる欧州リーグなので、日本選手の戦術理解の遅れは仕方ないことと思っていました。しかし、欧州では基本戦術ながらも、日本では単語化されず(=標準化されていない)、日本選手が知らない基本戦術があれば、日本人選手は「基本的な戦術も知らない」と思われていたのかもしれません。

■次に、“言語化”によりスポーツの発展に導いた、または、導こうとしている事例

1)野村克也ヤクルト監督時代のID野球

野村克也氏と言えば、ヤクルト監督時代の「ID野球」が有名ですが、今から振り返れば、「感覚や経験だけでなく、データを駆使して科学的な観点で野球をやろう!」という意識改革だったと言えます。今では当たり前になっているデータ野球ですが、当時は革命的な発想だったと言えます。

ID野球における投手の配球の一例をあげてみます。(*3
全てのバッターに通用する球として、バッターから一番遠く手を出しづらく、ヒットが生まれにくい外角低めのコース(アウトロー)を、野村氏は「ゴロゾーン」と呼んで、次のようなガイドラインを提示していたとのことです。

  1. 1ボール1ストライクのカウント、または、バッターが追い込まれてない状況で、真ん中から外角のゴロゾーンに変化するボールを投げると、バッターをひっかけさせてショートゴロになる確率が高くなる。
  2. バッテリーが配球に困った時やダブルプレーが欲しい時、「ゴロゾーン」への直球で勝負する。
  3. 投手は、この「ゴロ―ゾーン」にいつでも直球を投げ込むことができる能力を持つ。

改めて言われるまでもなく、当時の野球選手にとっても、上述ガイドラインは、感覚的には理解されているものだったとは思いますが、「ゴロゾーン」という造語を創り、その造語を活用し、上述のような体系的な説明、指示・指導は画期的なものだったと思えます。 

また、野村氏は、野球を通して、「人生の教え」を説き、多くの「人生訓」と言われるような名言を残し、選手の育成に力を入れていたことご承知の通りです。野村野球の薫陶を受けた結果、侍ジャパン監督を務めた栗山秀樹氏、稲葉篤憲氏、ヤクルトの優勝を果たした高津慎吾監督、真中満前監督、現役では、楽天の石井和久監督、日本ハムの新庄剛志監督など多くの教え子が監督になっています。

これら教え子達の監督の誕生は、野村氏自身のパーソナリティが影響していると思いますが、それだけではなく、他の監督にはない“言語化”を駆使し、指導したことにより、野球の取り組み方、チームマネージメント、育成等の手法、ノウハウがより具体的な形・イメージで継承された事例と言えるのではないか、と考えます。 

2)元サッカー日本代表監督岡田武史氏の岡田メソッド(4)

サッカー指導の“言語化」”典型的な例として、元日本代表監督岡田武史氏がオーナーを務めるFC今治の岡田メソッドを紹介します。

岡田氏が、岡田メソッドを作成した背景として、「サッカーの強豪国でもあり、自由な発想でボールを繋ぐイメージが強いスペインサッカーにおいて、サッカーのプレーの原則である「プレーモデル」の型があり、それを16歳までに教え込み、その後は、選手の判断に任せる指導の存在を知り、これが日本サッカーの育成に足りないものと判断した」と語っています。

岡田メソッドとは、「主体的にプレーできる自立した選手と自律したチーム」を育てることを目的としたサッカー指導の方法論の体系化したもので、育成における指導ノウハウの共用を狙ったものと言えます。

例えば、ボールを持った選手へのサポートであれば、「①緊急のサポート②継続のサポート③突破のサポート」の3つの原則に分類して示し、ボールを持っている人の状況、自分についているマークの状況を見て、ゲームの中で自分がどのサポートをすべきなのか、選手同士が3つの原則の中から声を上げながら選択・判断することで、指導者と選手、選手同志の共通認識ができるようになるとのことです。

岡田メソッドには決して特別な原則ばかりが載っているわけではなく、むしろ、これまでにも指導されてきたようなことも多く並んでいます。しかし、それらを言語化・体系化したものは過去には存在せず、そこに大きな意義があると言えます。

そして、岡田メソッドは、FC今治に留まらず、YouTube「岡田メソッドTV」で、サッカー指導の方法論を幅広く展開する一方、企業(NEC)と協力して、岡田メソッドをデジタル化し、育成におけるPDCAサイクルと指導ノウハウの共有による質の高い指導環境を創出するスポーツ育成支援プラットフォーム(下記参照)を共同開発し、他のスポーツ団体、スポーツ以外への組織への展開を行っています。(5)

. スポーツ育成支援プラットフォーム

もはや、岡田メソッドは、単純に“言語化”と語れない大きな取り組みとなっています。
今後は、岡田メソッドの指導をベースにしたFC今治の成績と「スポーツ育成支援プラットフォーム」等が、サッカー界にどのように影響を与えていくのか、追いかけていきたいと考えています。

今回は、スポーツ業界の“言語化”を例に挙げて、“言語化”の意味、有効性について考えてみましたが、ビジネスの世界でも、同じ業界・会社に所属し、そして関係部門・関係者と業務を行う上で、同じ用語で共有化すること、指導のノウハウや社員連携のための“言語化”は、非常に重要なことと思います。
もし“言語化”不足でコミュニケーションや若手社員育成などが上手くいかない場合は、まずは“言語化”の改善を図ってみては如何でしょうか。

(田口)

〔引用元〕
1  Number79520121
2【サカスペ辞書】日本語にはないスペイン語サッカー専門用語(2018625)
3野村克也氏の全てのバッターに通用する球と配球への活用
4サカママ「自分で判断し行動できる選手を育成する「岡田メソッド」を知っていますか?」(2022426)
5 日本電気株式会社「NECFC今治、サッカー指導法「OKADA METHOD」を取り入れたスポーツ育成支援プラットフォームを共同開発」(20201026)

#143  2023/8/1
仕事の遅れは1日ずつの積み重ね
~ 
プロジェクトは1日にして成らず、されどプロジェクトは1日にして滅ぶ ~

「豪雨で壊滅的被害の恐れ、『ローマは1日にして滅ぶ』のか」という記事(2023/7/9. 「緑のgoo」)を読みました。この記事から特徴的なところを抜粋してまとめてみます。

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◆「ローマは1日にして成らず」と言うが、そのローマの大部分は、ひとたび豪雨に襲われればわずか数時間で壊滅的状態に陥るかもしれない。気温の上昇によって、今や世界中で豪雨は日常茶飯事になっているが、ローマが特に危ぶまれているのは、老朽化したインフラに加え、過去数十年間、新たな危機をほとんど無視して都市計画を進めてきたせいだ。20102020年の間に、ローマの都市部は豪雨によって20回以上も大規模な洪水に見舞われた。
◆この街にはそれ(豪雨)に適応する計画がまだできていない。しかも、はるか昔に建てられた繊細な建造物は、とりわけ気候変動の影響を受けやすい。
◆ローマでは都市部の90%以上が浸透性の低い土で覆われているため、雨水が排水されにくい。また、大量の雨水に下水道が対応しきれずに、洪水が発生しやすくなっている地域もある。19世紀に埋め立てられた一部の地域は海面より低く、常に水をくみ上げなければならない。おまけに、ヨーロッパの首都のなかでもローマには特に違法建築が多く集中している。
◆テベレ川が決壊するとどうなるかをシミュレーションしたモデルを作成した。すると、全てのシナリオで、パンテオン神殿が少なくとも2.4メートルの水に浸かり、歴史的地区全体が深刻な被害を受けるという結果になった。
◆都市部では、大量の雨水を集めてゆっくりと地下に浸透させる浸透池やレインガーデンなどの自然を活用した方法で、洪水のリスクを抑えられる。しかし、河川工学専門家のフィオリ氏は、「全体的なビジョンがないままこうしたものを作ると、効果がないばかりか、逆効果になることもあります。この仕組みを正しく機能させるためには、慎重に調整された包括的な計画が必要です。区域ごとに好き勝手にやっていてはだめです。この場合、包括的なビジョンという考え方は、単なる刺激的で中身のないスローガンではなく、計画をうまく進めるために非常に現実的なものです」と指摘する。
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この記事を読んで「プロジェクト」でも同じことが言えると思いました。

プロジェクトは、全体的なビジョンと綿密な計画に基づいて、全プロジェクトメンバーがゴールに向かって、毎日毎日1歩ずつ努力、協力することで成り立っています。しかも少しでも気を抜いてしまうと、取り返しのつかないことが起こる可能性もあるものです。
つまり、前述のローマの話と同じく、「プロジェクトは1日にして成らず、されどプロジェクトは1日にして滅ぶ」ということです。

では、その“心”を少し詳しく解説していきます。

1.プロジェクトは1日にして成らず

プロジェクトとは、顧客の要望に基づいて、新商品の開発/生産/販売を、期限までに達成させるチーム活動です。顧客とは“企業”と“市場”、どちらの場合でも良いですが、ここでは便宜上“B to B ; 企業相手の製造業”を前提に説明していきます。

顧客からは、新商品の仕様/日程/数量/値段などが提示されますが、非常に厳しい条件が付いているものです。これを満足させるためには、「もの造りプロセス」である “開発” “部品調達” “試作” “品質保証” “認証” “量産” “出荷” など一連のプロセスを綿密に計画する必要があります。更にこのプロセスの中には、何百、何千ものタスクが積み重なって成り立っており、このタスクを全て実施するには膨大な工数と時間を要します。単純にタスクを1つずつ実施して、そのリードタイムを足し算すると、決して顧客の要求日程を満足しません。同時進行できるタスクや分業できるタスクは同時に実行して、全体のリードタイムを短縮させます。
一方、“このタスクが終わらないと、次のタスクが開始できない”といったタスク同士の関係性も考慮する必要があります。関係性を見落とすと、日程不成立となり、手戻りや余分なコスト発生に繋がります。

よって、顧客要求日程を満足したプロジェクト日程を作成するには、プロジェクトメンバー全員の経験、知恵、工夫と協力によって、綿密にタスク順序を組み合わせることで成り立っているのです。私はこのプロジェクトの日程表を「マスタースケジュール」と呼んでいます。ここには会社のノウハウが詰まっており、貴重な財産であると共に、プロジェクトを成功させる計画書でもあります。

そして、週次プロジェクトミーティングで、「マスタ-スケジュール」に基づいてタスクの進捗状況を1つずつ確認していきます。プロジェクト状況は日々変化するものですから、タスクの遅れや漏れ、課題の発生は付き物です。だからこそ週次プロジェクトミーティングの開催が重要であり、次のタスクに影響を及ぼさない様な対応策をプロジェクトメンバーで論議し決着させて、課題を乗り越えていきます。

この様に、マスタースケジュールを作成する事にも、その日程通りに実行する事にも、プロジェクトメンバー全員の日々の努力、協力が欠かせず、その結果で“新商品”が生み出されるものだから、「ローマは1日にして成らず」と同じく、「プロジェクトも1日にして成らず」と思ったのです。

2.プロジェクトは1日にして滅ぶ

一方、タスクの遅れも「1日1日の積み上げ」であることに注意してください。
例えば、

  • 今日は上司が居なくて、ハンコが貰えず、書類を次に回せなかった。
  • 今日は上司が出張で、会議が延期となり、結論が出せなかった。
  • 今日はお客さんの来社対応をしていたので…/会社イベント業務があったので…/突発業務が入ってきた/などで、当初予定していたプロジェクト業務が出来なかった。

この様なことはしばしばありますよね。「今日1日は忙しく仕事をしたのだから、プロジェクト業務が出来なかったことは良しとしよう!」という心理も働いてしまいます。致し方ないことでもありますが、遅れは1日1日確実に積み重なっているのです。

これを防ぐには、日々発生する小さな遅れにちゃんと向き合うことです。見て見ぬふりはダメです。

或るプロジェクトで期間が1年間とした場合、稼働日は230250日です。あなた自身の有給休暇を加味すると更に少なくなります。もし月に1日取得するとしたら年間12日となり、これは1年間の5%に相当します。(注;有給休暇は当然の権利ですから、休むことが悪いとは言っていません。単に実稼働日数をイメージする為に算出しただけです。)
自己都合だけで5%ですが、役員、上司、プロジェクトメンバーとの都合が組み合わさると、簡単に10%を上回ってしまいます。10%は大きな損失で、簡単には取り戻すことは出来ません。だから、1日1日の遅れは無視してはいけないのです。

マスタースケジュールに基づいて、次のタスクに影響させない為には、何を、いつまでに、どうすれば良いか?を常に意識して対処してください。事前に遅れが発生しそうだと分かっているのなら、事前に対処するようにしてください。

この様に常に前向きに対処する姿勢なら良いのですが、時には「忙し過ぎるから」、「時間が無いから」と言い訳を言って、タスクを無視する人も見かけます。無視したタスクのアウトプットが自分の為だけならばまだ問題はないのですが、次工程や他部署に影響を与えるのなら大きな問題です。

例えば、「節目会議」を一部省略してしまったプロジェクトがありました。
「節目会議」とは、プロジェクトの進捗状況をTOP層に報告し、レビューを受け、次ステップへの移行可否判断を頂くという重要な性質を持つ会議です。その準備作業である「進捗状況の情報収集とまとめ、報告資料の作成」には膨大な時間と手間を要します。確かに面倒ではあります。
だから必要十分ではなく、収集できた情報だけを一部のプロジェクトメンバーだけで確認して、次ステップへ移行する判断をしてしまいました。由々しきことだと思います。

「節目会議」には3種類ほどありますが、もしそれらを省略した場合のリスクは、

  1. 「開発DRDesign Review)」;
    図面に上司/他部署のノウハウが反映されず、後で品質不具合が出たり、対策が間に合わなかったりする。
  2. 「試作開始判断会」;
    ある部署の試作準備が完了していないのを見落とし、試作で確認すべきことが確認できなかったり、ロスが発生したりする。
  3. 「出荷判断会」;
     品質保証部門のみならず、関連部署の確認無しで商品を出荷してしまい、後に顧客や市場で不具合を発生させたり、責任問題になったりする。

少しの“サボり“が顧客や市場に迷惑を掛ける事になります。強いては、自社の信用問題や収益悪化につながるのです。今が良くなっても、後で大変なことになるのです。

話は反れますが、遅れの皺寄せを決して顧客に求めないでください。
ある部署のタスクが遅れた為に「営業さん! 顧客と納期調整をしてきてください!」と直ぐに言う企業体質は論外です。例えば、自動車業界で取得必須な認証であるIATF16949VDA6.3の思想にも反します。先ずは最善を尽くした対応策を提示して欲しいものです。

この様に、全体のビジョン、目標を見失い、今が良くなることだけを考えていると、「ローマは1日にして滅ぶ」と同じように、「プロジェクトも1日にして滅ぶ」ことになります。

3.まとめ

あなたのプロジェクトはどうですか?

繰り返します。
「マスタースケジュール」に記載された個々のタスクには重要な意味があって、関連性をもって繋がっています。ここには多くの経験、知恵や工夫が詰まっていて、プロジェクト成功への“道しるべ”でもあります。これを作成するのは大変ですが、その通り実行しゴールに到達するにはもっと大変なことです。

しかし、決してさぼらず、1つずつこなしていってください。
さぼったら大洪水でプロジェクトが壊滅するかもしれないということを知っておいてください。

頑張りましょう!

(前野)

#142  2023/7/25
リチウムイオン電池 基本特性「SOC」

 

今回はリチウムイオン電池の基本的特性について解説したいと思います。特に重要な特性は、SOCState Of Capacity)です。

電池に蓄電できる最大容量を満充電容量FCC(Full Charge Capacity)とすると、SOCFCCに対する容量維持率です(SOC50%ならFCCの半分の容量が維持されている)。
よって、SOCを知ることにより、今後、どの程度稼働できるか、いつ充電しなければいけないかを判断できることはもちろんですが、その時点で電池が出力できる電力(SOP)や、電池の内部抵抗にも関係しています。

実運用状態(実車走行中)で電池のSOCを知ることは、そう単純ではありません。
その一因を図1の単純な電池等価回路で説明します。

図1 (筆者作成)

図1の開放電圧OCVと電池のSOCは、電池温度も多少関係しますが、電池種ごとに決まった関係がありますので、開放電圧OCVを推定できれば、SOCを知ることができます。
しかし、図1のとおり、電池の内部抵抗は、R0の直流抵抗以外にもC1,C2の容量成分を持った抵抗R1R2などの拡散抵抗が存在し、高容量電池では、その時定数が数十分にも及びます。よって電池電流がZEROのときでも、電池端子電圧Vは、開放電圧OCVと一致しません。つねにC1C2に充電されたR1R2での電圧降下分を考慮しないと、開放電圧OCVを推定することができません。
さらに、やっかいなことに、R0R1R2C1C2は、電池のSOC、温度、電池の劣化状態により変化するので、これらも考慮が必要です。

ちなみに、実運用状態でBMS(Battery Management System)が直接測定可能な量は、電池端子電圧、電池電流、電池温度なので、これらをベースにSOCを推定することになります。

表1のとおり、さまざまなSOC推定法が提案されています、代表的な方法を解説します。

1)電流積算方式

電池の電流を測定し積分することで、電池の充電、放電量を計算することができます、これを初期の充電容量から増加減することで、その時点での電池容量が推定でき、満充電容量FCCとの比較でSOCを推定できます。
しかし、電流測定誤差が積分により積み重なること、また電池の劣化による満充電容量FCCが減少することにより、時間経過とともに誤差が増大していきます(逆には、短時間ならば大丈夫)。

2)電圧(OCV)法

電池電流をゼロにして、図1のC1,C2が完全に放電できる十分な休止時間をおいてから電池端子電圧を測定することで、開放電圧OCVを求め、OCVSOC線図からSOCを推定します。よって稼働中は使用できません、稼働前や充電終了時等、十分な休止時間がとれる状況で使用するケースが多いです。特に充電終了時は、電池の内部抵抗値、その時定数ともに小さくなるので、より精度よく推定可能です。

3)電流積算+OCV

もっとも利用されている方法です、上記1)、2)を合成し、それぞれの欠点をカバーした方法です。充電完了後、定めた休止時間を経過した場合に、電池端子電圧をOCVとしてSOCを推定し、SOC初期値とします。稼働開始からの電流を積分し、SOC初期値に増加減し、稼働中のSOCを推定します。SOC初期値は充電毎に更新されるので、電流積分誤算が蓄積されません。ただし、1)2)だけでは、電池劣化による満充電容量の減少を考慮できていないので、電池の容量劣化(SOHC)を推定できる方法と併用し、補正します。

表1 (筆者作成)

ちなみに、電池電流で蓄えられる電気量クーロンの関係は、図2のとおりです。

図2 (筆者作成)

他にも、電池端子電圧からSOCを測定する方法もありますが、内部抵抗R1R2での電圧降下が既知である状態でのみ推定できます。つまり、同一の端子電圧、電池温度、内部抵抗劣化状態(SOH-R)で使用できます。

もう一つ、モデル法があります。図1の電池等価回路をベースに、電池の端子電圧、電流などから、R0,R1,R2,C1,C2を推定して、OCVを求めます。
しかし、前述したとおり、R0,R1,R2,C1,C2は、電池温度、SOC、電池劣化などの影響があるため、推定計算が非常に複雑になるため、フルモデルで実用化された(市販されている)例は、あまりないと思います。

(山田)

#141  2023/7/18
“より有意義な会議に向けてのコツ”こぼれ話
~ シリーズ⑤ 出た意見の整理法(1)簡易版 見える化編 ~

これまで、この会議シリーズでは
「①会議の事前準備編」(1091129日)
「②会議当日冒頭環造り編」(116124日)
「③当日会議 意見出しスタート編」(124321日)
「④当日会議 意見出しお作法!編」(132519日)
をお届けしました。
そして、今回はシリーズの第五弾として、「出た意見の整理法(1)簡易版 見える化編」をお届けします。

皆さまは会議当日の意見出しの場面で、せっかく多くの意見が出てきたのに、思うように見える化したり、ポイントを明示して残したり、皆での共有化がままならなくて困った、等々の経験がお有りではありませんか?

多くの意見の中には貴重なアイディア等も有ると期待され、本来は、せめて見える化して共有し、『会議の話合いの成果の要点はこの3点です!』として今後に活かせるようにしたいものですね。

お任せください。ほんのチョットの工夫で、会議の皆の意見や要点を、見える化できる【コツ】が有ります!
今回は、その中でも最も簡易的に実践できる方法を、こぼれ話としてお伝えしたいと思います。
準備はとても簡単で、ホワイトボードか、壁に書けるものがあれば可能です。

通常は殆どの会議で、左半分に箇条書きに書いていき、埋まったら右半分に埋めていますね。
コレでは、意見の形跡は残りますが、この会議の要点は見え難いままで終わってしまいます。

そこで今回は、そうなる前にひと工夫です。

一見ありきたりですが、出た意見をとにかく見える化で書いていきます。
ホワイトボードに書いていくのに違いはありませんが、但し、コツが1つ!
議事進行役(書記役)が、上記のように意見が出た順に単なる箇条書きで詰めて書くので無く、チョットだけ書く場所を工夫するだけでよいのです。

【コツ1】
意見の出始めは、議事進行役が予め軽く予想したカテゴリー毎に、同類で無い意見が散らばるように、最初に出始めた意見の場所を、分けて離して書いて行くのです。

【コツ2】
できれば、議事進行役は会議の前に、どんなカテゴリーが出そうかを予め軽く予想しておくとスムーズです。

【コツ3】
そして次の意見が出る毎に、近い意見の場所に書いていきます。
意見が或る程度出始めたら、近い意見の場所の傍に追記していきます。
こうやって多くの意見が出てくると、自ずと、いくつかの島の大きな群に固まっていきます。 

【コツ4】
出揃った(又は時間切れ等で区切った)ところで、各群をよく表した『言葉』を(できれば色違いで)書き添えます。

コレで完成です。

出来上がった全体を俯瞰してみると、きっと狙い通り、いくつかの島の群と、各々の群を代表する『言葉』で、会議の結果が見える化され、要点をいくつかの言葉で表現し易い見える化になっている事でしょう。

【コツ5】
この時の、各群を表す言葉を書く時のコツは(要するに…)を付けると各群の『言葉』が思い付き易くなります。

【コツ6】
各群や、その群を(要するに…と象徴的に表した)「言葉」をマーカーで軽く囲んでおくと、全体を俯瞰した時に、どのような群とそれを表す「言葉」がきっと5つ前後に纏まって、見える化の結果がより分かり易く表現されることでしょう。

◆『今後に向けて』

いかがでしたか? ホワイトボードに書く際にも、ひたすら書いて埋めていくのではなく、上記のようなコツをチョット活用することで、意見の見える化や主な要点を纏めて、会議の成果として表現・共有できれば、会議後のフォローもし易く、ひいては実践的成果に繋がることでしょう。

今回は、より有意義な会議に向けた「⑤出た意見の整理法 簡易版 見える化」を中心にお伝えしました。いくつかのこぼれ話から1つでも皆さまが拾えて再活用できるものが見つかりましたら幸いです。また、筆者のコラム担当回では、引き続き、実際の会議の中での有効なポイントをお伝えし続けたいと思います。どうぞ、お楽しみに!

このコラムに関連して、会議の更なる有効化にご興味を持たれた方は、ビジネス未来&Co.にご一報戴けましたら、ご相談をいつでもお受けします。皆さまのご連絡をお待ちしています。

(井上)

#140  2023/7/11
親と同居/別居という選択について
~ 
少子化対策と関連付けてみました ~

◆私の就職先選び

 40年以上も前のことではありますが、私の就職先選びの条件は以下の3つでした。

  1. 自分の関心のある業界、職種であること
  2. 自宅から通えるところに勤務地があること
  3.  遠隔地への転勤の可能性が少ないこと (上記とも関連しますが)

 条件1は当時も今も極めて一般的な条件だと思いますが、今回は2・3に関するお話をしたいと思います。

 なぜ、自宅から通えるところを就職先の条件にしたかと言うと、単純に将来に渡って親と同居するのが当然と考えていたからです。私はサラリーマン家庭の長男で、2歳上に姉がいました。父親は地方出身のサラリーマン、母親は専業主婦だったので、家業を継ぐ必要は無いし、親から頼まれた訳でもないのですが、「長男なので将来は自分が親の面倒を見るもの」と思っていました。
 
結婚相手にも最初からそのことを伝えていましたし、実際その通りの人生を歩んできました。
 
ところが、子供の頃に近所同士だった同世代の男の子たちは悉く家を出て独立して行きました。その結果、高齢化した両親が残った家はやがて住む者がいなくなり、次々と新しい家やアパートに立て替えられました。そして今は、引っ越してきた新しい家族や近隣の大学に通う学生の住まいになっています。

 そこで今回は、親との同居をテーマにまとめてみました。因みに私は生まれた時からずっと、神奈川県の都心にギリギリ通勤圏内の地域に住んでいます。

◆日本の同居事情

 少し古い資料ですが、上の日本地図は2015年の国勢調査から各県の人口に占める三世代世帯の比率を比較したものです。

このデータからは以下のようなことが分かります。

① 日本海側から東北にかけて三世代世帯が多い。
② 東京圏と京阪神圏では三世代世帯が少ない。
③ 鹿児島県の三世代世帯率は東京都に次いで2番目に少ない。

他の国勢調査データと上記①~③の関係を調べてみると、以下のようなことが言えそうです。

① 広い持ち家、農業従事者、共働き率の多さなどとの相関関係が強い。
② 人口密度や未婚者率の高さなどとの相関関係が強い。
③  鹿児島県は小学生のお手伝い率第1位(大阪、東京は低い)。一方で人口当たりのスターバックス店舗数は最下位(東京は第1位)
  ⇒子供は親孝行だが、就職事情などで地元に残れる若者は少ない?

 私の住む神奈川は三世代世帯が少ないことがデータ上も分かりましたが、私の近所の幼なじみの例では、未婚・遠隔地(沖縄、北海道など)に就業・嫁姑問題など、三世代世帯が少ない理由は様々です。

◆三世代同居のメリット/デメリット

 【メリット】

● 親の老後の面倒を見やすい
私は父を最後まで看取り、母も今は近隣の高齢者施設のお世話になっていますが、毎週会いに行くことができます。逆の例として、遠隔地に住む年老いた親の様子を見るために頻繁に飛行機で実家に帰っている友人もいます。

● 家事や育児を分担できる
3人の子供たちが小さかった頃は共働きだったこともあり、母親にはずいぶん助けてもらいました。一方で、核家族にとっては子どもが保育園に入れない再就職の壁が社会問題にもなっています。

●経済的な負担減
二世帯住宅にすることで、新たに住宅を購入するための負担減や日常の生活費の節約など、経済的なメリットも色々とあります。

 【デメリット】

■ 嫁姑問題などのストレス
前述のように、結婚当初は同居していたがこの問題で途中から実家を出た友人家族もいます。生活パターンや価値観の違いがストレスの原因になるようです。

■ 環境変化の問題
上記とは逆に、途中から親を呼んで同居を始めた場合など、住み慣れた土地を離れた親が新たな環境に順応できなかったという例も身近にあります。

■ 親の介護問題
身近にいて面倒が見やすい一方で、四六時中介護が必要になって子供夫婦が精神的・肉体的負担で疲れ果ててしまうケースも珍しくありません。

 【三世代同居を成功させるには】

課題も多いですし、正解は1つではないと思いますが、私の経験上、不満があっても“我慢する”のではなく、お互いに多少の問題は“許し合う”気持ちを持つことが一番大事だと思います。

 ◆少子化対策との関係は?

 私がスタッフとして所属しているスポーツ少年団では、近居(親世帯と子世帯が近い距離に住んでいる状態)という形態をとる家庭が散見されます。基本的には別世帯で生活しながら、親の仕事の都合に合わせて祖父母が孫の送り迎えをし、親が帰宅するまで孫の面倒を見る感じですが、ちょうど良い距離感で上手くやっている家庭が多いように感じます。
 また、スポーツ少年団では保護者も指導者と協力し合いながら活動を支援しているので、子供たちの成長を大人が皆で見守ったり、保護者同士で困りごとや悩みごとの相談に乗ったりというつながりも生まれます。
 スポーツ少年団と少子化対策の関連性を示すデータはありませんが、何十年間も続けてきて感じるのは、私が所属するスポーツ少年団の団員は“兄弟が多い”ということです。団員の兄弟の数は、平均すると“3人”に近い(1人っ子や2人兄弟は少数派)だと思います。
 話が少しずれてしまいましたが、行政による様々な支援と共に、三世代同居・近居や地域・コミュニティで子供たちを育てることも少子化対策につながるのではないかと感じています。

参考資料;
 ・都道府県別統計とランキングで見る県民性(2023年;久保哲朗)
 ・セゾンの暮らし大研究(2023年)

(田村)

#139  2023/7/4
世界のBEV/PHEVの普及状況について(2)
 BEV; Battery EVPHEV/PHV; Plug-in HEV)


前回のコラム(#130:2023/5/2)で、世界のBEV/PHEVの普及状況について寄稿し、世界的にBEV/PHEVが急増していることを報告しましたが、同時にネット、You TubeにはEVの車両火災の発生;Tesla, BYD, NIO, GM,  VWと車両火災によるリコール;GM, Ford, Hyundai, BMW, VW等も扱われており、それらが実際はどうなっているか、例えばガソリン車(以下、ICE; Internal Combustion Engine)と比較してどうなのか気になり、調べてみました。

PT(Powertrain)Type 別の車両火災の発生件数*1 & *2

1) 下記<図1>は、米国の自動車保険比較サイトAutoinsurance EZ.com(オートインシュアランスEZドットコム)が、米国家運輸安全委員会(NHTSB)、米運輸統計局(BTS)から車両火災に関するデータを集計し、20226月に発表した資料を基に、日経Automotiveが作成したものですが、発生件数でみると、ICE車が圧倒的に多いが、発生割合という点からみると、HEV(ハイブリット)車がICEの2倍以上多いことに驚いていますが、EV車は、発生件数、発生割合共に、ICE, HEVと比較してもかなり低い。

〈図1〉PT別の車両火災の発生件数

BEV車は、発生件数、割合とも、ICE, HEV車と比較すると圧倒的に低いのに、何故注目されているのか、次のリコールの届け実績も入れて、考察しているのでご参照願います。

◆リコール対象台数順リコール届出情報

〈表1〉リコール対象台数順リコール届出情報

2) 上記<表1>は、<図1>同様にAutoinsurance EZ.comが、リコール情報サイトRecalls.govからリコールに関するデータを集計し20226月に発表した資料を基に作成したものですが、リコール対象台数で見ても、ICE車が圧倒的に多く、その原因は電気回路の短絡等いろいろですが、EV/HEV車のリコールの発火原因は全てバッテリであり、しかも韓国製(LG化学とサムスンDGI)のバッテリです。

3) 更に、GM Chevrolet Bolt EVHyundai Konaのリコール*3
以下の共通点があります。

① バッテリサプライヤがLG化学で、発火原因はバッテリの製造不良であった。(Boltは、セル内に破損した陽極タブと折れたセパレーターがあるという欠陥で、Konaは負極タブの折り畳みによるもの)
② その為リコール費用の分担は、Boltでは19Konaでは37LG 化学負担が非常に大きい
③ リコール2回実施しており、Bolt202278月、Kona2018年と2020年、どちらも1回目の対策車両で再度火災が発生して、対象範囲を拡げていること

補足;実は、GM Boltの対象台数は、上記の表は2回目のみで、1回目の対象台数を合算すると、14.2万台となり、EV最多のリコール台数となる。

 ◆米国連邦政府独立機関の国家運輸安全委員会(NTSB)による電気自動車(EV)用高電圧リチウムイオンバッテリーの火災に対する緊急ガイドの見直し勧告*4

1) 本勧告は、NTSB202011月に発表したEV車両事故の事例分析であり、20211月にEVメーカー22社に提出されていた。

2) 202261日、ホンダ、現代、三菱自動車、ポルシェ、フォルクスワーゲン(VW)、ボルボ、大型商用車メーカー;プロテラ、バスメーカー;バンホールの8社がNTSB勧告のEV用高電圧リチウムイオンバッテリーの火災に対する緊急ガイドの見直しを行うことに同意したと発表した。

3) 更に、現在ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、トヨタ、テスラなどを含む12社でも受け入れの検討を進めている。

4) EV車両事故の事例分析レポートでは、バッテリー火災により損傷したセル内で、発生する「熱暴走(Thermal Runaway)」や、いったん鎮火したと見えるバッテリーの内部に「取り残されたエネルギー(Stranded Energy)」が残存することで起こるバッテリーの再燃焼や感電事故といったEV特有の危険性を指摘している。

 

◆EV普及の過渡期といわれる中、安全性に対する消費者の信頼感を高めるため、一定の水準を担保した緊急時の対応策を定める意味は大きいと考えられる。

◆緊急ガイドにおける「取り残されたエネルギー」の処理方法や、緊急時の対応要員(消防士や、車両の牽引者)が受けるリスクに関する情報は十分ではないので、NTSBはメーカーや安全基準を所管する米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)に対し、国際標準化機構(ISO)やモビリティ専門機関のSAEインターナショナルが定める基準に基づいて、緊急ガイドや査定基準を作成するよう求めていた。

さらに、全米防火協会や車両の牽引に携わる業界団体などに対しては、NTSBが提案する具体的な安全対策の実行などを促している。

NTSBの活動は、EV普及のインフラとしては大変重要であるので、NHTSA, ISO, SAEと協力して、緊急対応技術基準を作成促進することが重要である。

【引用元】
1;日経ビジネスのサイトから 「EV電池の火災を防げ カギ握る日本の検査技術」2022-12-09
2; CNET Japanのサイトから
  「目立つEVの火災事故だが、販売10万台当たりの火災件数はHVが最悪…次いでガソリン車」2022-01-17
3;脱炭素を面白く Energy Shiftのサイトから 「GMEVが火災でリコール 日本勢にも影響か」2021-08-31
4;JETROのビジネス短信のサイトから
  「自動車メーカ8社、EVバッテリー火災への対応で米政府独立機関勧告を受け入れ」2022-06-09                             

 (片岡)

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